人生経験を積んで見えたものは

若い頃の経験を生かして

ひだまりの森に鋭い金属音が響いている。
音のする方へ行ってみると、太陽に反射する真っ黒なコンテナが見えた。
覗いてみると、火花を散らしながら、真剣な表情を浮かべる1人の男性がいた。

この男性は、「株式会社 オーバード」の代表取締役・鉄工職人の磯田敦史(いそだ あつし)さん。
磯田さんとの出会いは、以前取材をさせていただいた、上原さんの紹介だった。

実は、磯田さんと上原さんは中学生からの知り合いで、よく遊ぶ仲だったという。学校を卒業してからも交流が途切れることはなく、縁は続いていた。
「腐れ縁だ」と、磯田さんは笑っていたけど、私はその縁が眩しくて仕方がない。

お互いのことを話す時の屈託のない笑顔や言葉から、この2人は心から信頼しているのだなと感じることができたから。それに、2人は纏う雰囲気がどこか似ている。

磯田さんは芽室町出身。
小学校・中学校を芽室町で過ごし、幕別の高校へ。高校を卒業後は、札幌の音楽の専門学校へ進学した。
ギター科を専攻していたが、音楽で食べていきたいという思いよりは、まだ人生を自由にいきたいという気持ちが大きかったという。

専門学校を卒業した後は、磯田さんのお父さんが経営している鉄工業で就職した。

「父の会社を継ぐ気はなかったですね。就活がめんどくさかったから、とりあえず父の会社に就職したという軽い気持ちでした。仕事に対する情熱とかは、当時はあまりなかったです」。

2〜3年勤めていたが、ここである事件が起こる。

「ある日父と大喧嘩をして、そのまま家を出ました。家を出たのと同時に会社もやめました」。

親子喧嘩で会社を辞めた磯田さん。
しかし、どんなに大きな喧嘩をしてもやっぱり家族の絆は切れないもの。
磯田さんの結婚を機に無事仲直りした。

家を出て、建築板金屋に就職するが、2〜3年後に社長さんと喧嘩して退社。
その次に働いた牧場でも、オーナーさんと衝突して退職した。

「あの頃は若かったね!喧嘩ばっかりしていた気がする(笑)」

と、笑いながら語ってくれた。
血気盛んな若い頃ならではのエピソードだ。

余談ではあるけど、私はこういう若気の至りの話が大好きだ。
誰もは1度は通過する“若さ”を、失敗や苦労を塗り重ねながらも、思い切り楽しめるというのは、とっても幸せなことだと思うから。
1度しかない人生を我慢して大人しくして、ただ歳を重ねるのはもったいない。

磯田さんは、若い頃から自分という軸がしっかりとしていたから、相手と衝突してしまったのかもしれない。
折れなくて太い軸。
今でも磯田さんの胸の中にしっかりと輝いている。

仕事と守るべき存在

21歳の時に結婚して、2人の子供にも恵まれた磯田さん。
家族を持つと意識も仕事の向き合い方も自然と変わっていく。

「人生の最初の転換期は、やっぱり結婚でしたね。家庭を持つと自然と責任や重圧がのっかてくる。仕事や人生について考える時間も増えました」。

31歳の時、冷凍食品の配達を行う配送の仕事に就く。
「配達の仕事は、1人の空間が居心地がよかったので凄く自分に合っているなと思いました」。

6年〜7年勤めた後は、高速道路の整備会社へ入社。色々な職種の経験を重ねることによって、少しずつ人生の経験を積んでいく。

30歳を過ぎた時にある不安が頭を過ぎるようになった。

「本当にこのままでいいのだろうか?何か自分でできることはないだろうか?」
子供も大きくなってきて、ちょうど自分の人生について振り返る余裕が出来てきた。昔から、起業したいという気持ちはあった。もし動き出すならこのタイミングなのではないか?と感じていたという。

37歳の時に「株式会社オーバード」を設立して起業。

「起業する時は、仕事があるか不安でした。だけど、不安より自分で何かをやりたいという気持ちの方が大きかった。なので、起業を決意しました」。

正直に言うと今でも仕事が無くならないか不安だ、と笑う姿はどこか楽しそうで、
自分らしさを武器にやりたいことに真っ直ぐに向き合っていることが感じられた。

起業の道はやっぱりそう簡単ではない。
初めは、鉄工業の仕事の依頼は少なく、他の会社のお手伝いからスタート。
徐々に人脈を広げていき、少しずつ仕事を増やしていった。

磯田さんが頑張る理由の一つに、起業当初から磯田さんを支える2人の従業員の存在がいる。

今年21歳になるフレッシュな青年たちだ。

「1人ではなく、この2人も食べさせて行かないといけない。そう思うと自然と体が動きますね。2人からは色々とフレッシュな若いパワーをもらってます」。

仲間であり、弟子であり、息子のような存在。
3人の家族のようなやりとりに胸がじんわりと温かくなる。

鉄と木材が融合した家具の制作を開始

磯田さんは、2020年4月にオーダーメイドアイアン家具「WAKA(ワカ)」のブランドを立ち上げている。
ブランド名は、磯田さんの娘さんの名前からとったものだ。

「もともと家具を作ることが好きだったので、鉄と木材が融合したアイアン家具を作りたいなと思いブランドを立ち上げました」。

木材をアンティーク風に加工するのは、磯田さんにこだわりポイントのひとつだ。

「これからは、WAKAの家具を使った店舗を作ってみたいです。これからも失敗を恐れずに新しいことにチャレンジしていきたいと思っています!」

失敗も成功も全て自分の力に変えてきた磯田さん。
守るべき存在や責任を背負いながらも、明るく前向きに生きる姿がとても眩しく感じた。

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